死後35年、録音でふりかえるウーゴ・ディアスの偉大なる軌跡

死後35年、録音でふりかえるウーゴ・ディアスの偉大なる軌跡

 1927年、アルゼンチン北西部サンティアゴ・デル・エステーロに生まれたウーゴ・ディアスはわずか50年の人生の間にあまりにも多くの影響を残したアルゼンチン音楽におけるハーモニカ演奏のパイオニアである。
 幼くして事故で視力を失ったウーゴは病床でハーモニカを手にし、幼馴なじみだったパーカッション奏者ドミンゴ・クーラと共に早くから演奏を始めた。19歳の時、アルゼンチンで活躍していたパラグアイ・アルパ奏者の先駆者フェリクス・ペレス・カルドーソに見いだされ(実は彼に見いだされ、デビューのきっかけをつかんだアーティストは結構多い)、ブエノスアイレスでデビューを果たす。レコード録音を始めたのは1952年、以後の死の直前まで数多くの録音を残してきた。
 近年、初期の録音がまとめて復刻され、その録音歴のほぼすべてがCD化されたことになった。順番にまとめると次のようになる。

(1) アオラ BNSCD-915 アンソロジー初期録音集VOL.1 1952-1953(2枚組)
(2) アオラ BNSCD-916 アンソロジー初期録音集VOL.2 1954-1957(2枚組)
(3) アオラ BNSCD-920 アンソロジー初期録音集VOL.4 1967-1968(2枚組)
(4) アオラ BNSCD-921 アンソロジー初期録音集VOL.5 1970-1970(2枚組)
(5) ビクター VICP-62181~2 ハーモニカの鬼才~フォルクローレ名曲集(2枚組)2002年
(6) ビクター VICP-60902~3 魂のタンゴ・ハーモニカ ~ブエノスアイレスのウーゴ・ディアス(2枚組)1999年
(7) ECCOSOUND 00050 Homenaje a Carlos Gardel (アルゼンチン盤)1997年(※他にAqcua盤など数種有)
(8) Musimundo 806024 “Jazz”(アルゼンチン盤)1992年


(1)~(4)はAQCUA Recordsから出ているものだが、今年アオラ・コーポレーションから日本盤として配給され、私が解説を担当させていただいた。これによって一通りウーゴ・ディアスの録音がCD化されたことになるので、この機会に他の時期のものもあわせてまとめておく。上表を見て分かるとおり、本来なら(2)と(3)の間にあるべきアンソロジーのVOL.3だけがまだ出ていないが、これについては後述する。

初期のテーカー(TK)への録音はLP化されたものについてはほぼ(1)(2)で網羅されているが、SP・EPでしか出なかったものは漏れているようだ。
以下参考として私の手元にあるSP盤のデータをまとめてみる。
S-5088 Que se ha puesto el pago / Pájaro campana 1952
S-5165 Isla Sacá / Engañera 1953
S-5337 Indiana* / General Pinedo* 1953
S-5349 Tacita de plata / La barranquera 1954
S-5396 Selección de polkas / Recuerdos de Ipacaraí 1955
S-5419 La cortejada / Cantando se van las penas* 1955
S-5421 Allá en el atardecer* / Tiempo de alegria 1955
E-10091 La pena del chango / Cunumicita 1956/1955
E-10092 Polkita del reloj / Amor que vuelve* 1955
E-10094 Zamba del quebrachal / El puro ritmo* 1955
E-10157 Cascadas / Selección de chamames* 1957
E-10159 Chacarera doble / Tu tremendo silencio 1957
E-10160 San Baltasar / Selección de rancheras* 1957
E-10161 Por eso vengo* / Se ha ido* 1957
E-10207 El mensú / Danza paraguaya 1958
E-10456 La Salamanca / Cuando el diablo toca el bombo 1960


タイトルの後が録音年で、テーカーの場合、原盤番号の後ろに録音年がついているので、それによっている。おそらくこのリストの倍以上の録音は存在するはずだが、このリスト中だけでも*印の10曲が第1集、第2集共に収録されていない。
またこの期間の途中、1953~55年にはパンパ・レーベルで録音をしており(その一部はJuan Nicolas Díaz名義で出されているので契約上の問題もあったのかもしれない)、少なくとも12曲がアルゼンチンEMI 4085でLP化されており、53年分はCDの第1集、54~55年分は第2集に含まれている。

現在編集中の第3集は1958~1966年の間になるはずだが、いずれにしてもCDに表記されている録音年代はあまりあてにならない。第1集は1952~53年の録音となっているが、実際には1960年録音のはずのCuando el diablo toca el bomboやLa Salamanca、1958年録音のはずのEl mensúが入っていたりしている。

第3集の期間にはディスクジョッキーへの録音が含まれるはずだ。私の手元にあるのは17センチ盤4曲入り"Canto de pajaros"だけだが、他にもあるのか...。

Hugo Diaz EP


またヨーロッパに行っていた時期も含まれるはずだ。実はヨーロッパで1961年にボリビア生まれのリズム「スク・スク」をヒットさせ、「ミスター・スク・スク」と呼ばれたアルゼンチン人歌手アルベルト・コルテスのオリジナルヒット版「スク・スク」の伴奏は実はウーゴ・ディアスであり、他にもウーゴ・ディアスは当時のコルテスの伴奏にけっこう付き合っている。そういうものも含まれるのだろうか...

第4集と5集はRCAレーベルに残した5枚のアルバムを復刻したものである。オリジナル・アルバムは以下の通り。
(1) RCA Camden CAS-3072 “Magia en el folklore”
(2) RCA Camden CAS-3072 “Magia en el folklore vol.2”(=日本盤 RA-5713「アルモニカの哀愁」)
(3) RCA Victor AVLP-3996 “El arte de Hugo Díaz”(=日本盤 RA-5672「幻想のハーモニカ」)
(4) RCA Camden CAS-3252 “Mi armónica y yo”
(5) RCA Victor AVLP-4053 “Puro ritmo”


(1) と(2)が第4集、(3)(4)(5)が第5集に収録されている。
この後、レーベルがトノディスク系に移り、1977年に急逝するまでに8枚のアルバムを残した(はずである)。
(1)Tonodisc TON-1034 “Hugo Díaz en estereo” (1972) (=日本盤 Victor SWX-7049 「ビバ・フフイ」)
(2)Tonodisc TON-1035 "Hugo Díaz en Buenos Aires" (1972)(=日本盤 Victor SWX-7034 「ブエノスアイレスのウーゴ・ディアス」)
(3)Tonodisc TON-1049 "Hugo Díaz en Buenos Aires vol.2" (1973) (=日本盤 Victor SWX-7094「軍靴の響き」)
(4)Tonodisc TON-1075 "Hugo Díaz en Buenos Aires vol.3" (1974) (=日本盤 Victor SWX-7110 「ラ・クンパルシータ」)
(5)Tonodisc TON-1076 "Nostalgias santiagueñas" (1973) (=日本盤 Victor SWX-7099 「忘却のチャカレーラ」)
(6)Tonodisc TON-1097 "En el litoral" (1974)(IMPACTO IMP14078で再発)
(7)Tonodisc TON-1103 "Hugo Díaz para Gardel - 40 Años después" (1975)(IMPACTO IMP14017で再発)
(8) NG Records 6005 "Jazz" (1975?)
 

この時期になるとしらふでスタジオに入ることはほとんどなくなったと言われており、録音には息づかいやうなり声が聞こえ、酔いしれるような、気持ちをぶつけるような演奏が多くなっている。またタンゴ集が3枚ある。以前からタンゴはレパートリーにはあったようだが、録音したのはこの時が初めてのはず(RCAに録音したメドレー中に「泣き虫」があったが...)。それにしてもタンゴ集は素晴らしい内容。ぜひ再発を願いたいところである。
ちなみに以前の日本盤CD「ハーモニカの鬼才~フォルクローレ名曲集」には(1)(5)(6)の3枚分、「魂のタンゴ・ハーモニカ 」には(2)(3)(4)の3枚分が収められている。
 日本で発売されなかった(7)カルロス・ガルデル曲集はレーベルを変えたびたびCD化されてきた。最後のアルバムとなった初のジャズ集は伴奏陣がやや手軽な感じだが、昔から親しんできたであろうスタンダードを心ゆくまで吹いている。アルゼンチンのレコードチェーンである「ムシムンド」の企画盤として1度だけCD化されたが、まったく日本には入ってこなかったようだ。

彼の生涯を描いたドキュメンタリー映画「ア・ロス・クアトロ・ビエントス」はまだ見る機会に恵まれていない。そちらのサウンドトラックにもいろいろな録音が使用されている(AQCUA Records AQ187 “A los cuatro vientos” 2008)。そこで気になるのは、フォルクローレのアーティストで最も早くからテレビ出演していたというウーゴ・ディアスの映像は残っているのだろうか? この映画には何かしら使われているのではないかと期待するのだが、他のDVD等で見たことは一度もないと思う。
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キケ・シネシ&岩川光 ライヴat CAFÉ DUFI セットリスト

リクエストもありましたので、昨日のライヴのセットリストを載せさせていただきます。

2012年12月15日 キケ・シネシ&岩川光 ライヴat CAFÉ DUFI セットリスト
(< >内はキケ・シネシの使用楽器)(特記なきものはキケ・シネシ作)

1 Alta paz(至高の平和)<ピッコロギター>
2 Alas desplegadas(広げられた翼)<7弦ギター> ※マルクス・シュトックハウゼン(tp)に捧げた曲
3 Dos soles(二つの太陽)<7弦ギター>
4 Berliner Tanguismos Part2 (ベルリン・タンゴ パート2)<7弦ギター>
5 Berliner Tanguismos Part3 (ベルリン・タンゴ パート3)<7弦ギター>
6 Foro escapado(逃げゆくフォロ)※チリ生まれ・在仏のケーナ奏者Leonardo Garcíaの作品<ケーナソロのみ>
7 Siete ciudades japonesas(日本の7つの都市の印象)(仮)より3曲(岡山~姫路~京都)<7弦ギターソロのみ>
  ※本年5月のカルロス・アギーレ=キケ・シネシ公演で訪れた7つの日本の都市の印象をまとめた作品
8 Vuelo a ti(私はあなたに向けて飛んでいく)<7弦ギター> ※岩川作
9 Alfonsina y el mar(アルフォンシーナと海)<7弦ギター>※Ariel Ramírezの作品
10 Soltando amarras(ソルタンド・アマーラス)<チャランゴ>
11 Pides un deseo(君のお願い)<7弦ギター>※岩川作
12 Danza sin fin (終わりなきダンス)<7弦ギター>
13 Andando (歩みながら)<ピッコロギター>

本日(12月16日)多治見での公演も拝見しましたが、ちょっとだけ曲目・曲順など異なっていました。いずれ確認してUPしようかと思います。
今回の岩川氏との共演では、アギーレとのデュオとはまた違った鋭さと緊張感をみせたキケさん、実はアルゼンチンを出発する前日にお母さんが倒れてしまったとのことでずっと心配していました。帰ったら仕事はすべてキャンセルしてまずは看病に徹するそうです。それからゆっくり「日本の印象」の全曲をぜひ録音して広く聞かせてもらいたいものです。
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